満月の人魚
ガンッガンッと、体育倉庫の扉を叩く音が聞こえてくる。

「瑠璃、そこにいるのか?」

黒沢のくぐもった声が聞こえてきて、瑠璃は飛び上がるほど驚いた。

今しがた胸に思い描いていた黒沢の声が聞こえる。

「くろさ……丈瑠!丈瑠‼︎」

瑠璃も内側から扉をバンバン叩いて、“ここに居る”と主張する。

程なくして扉が開いた。

外から差し込む日差しに目を細めて扉の方を見やると、黒沢が立っている。

「無事か?」





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