満月の人魚
「黒沢の席は二列目の一番後ろだ。しばらくは周りの席のやつらに色々と助けてもらいなさい。」

席に移動する黒沢が、一列目に座る瑠璃の横を通りーー

「……?」

何故か瑠璃の横で立ち止まり、瑠璃を真っ直ぐに見つめてくる。

ーー目と目が合った。

意思の強そうな瞳に引き込まれて、視線を逸らす事が出来ないーー



「天野(あまの)、黒沢、2人ともどうした?」

担任の声ではっと我に返った。思わず目を逸らして下を向く。

どれ位の間自分達は見つめ合っていたのだろう。
一瞬のような気もするし、長い時間のような気もする。

何でもありません、という黒沢丈瑠の声を聞きながらそんな事を思った。
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