満月の人魚
「天野の事が怖いのは当然のことだ。だから気にするな。」

丈瑠は瑠璃の顔を覗き込み、どこまでも優しく告げてくる。

瑠璃にとって、今はその優しさが心苦しいほどだった。

しかしすぐいつもの真剣な表情に戻り、瑠璃に状況があまり良くない事を伝えてくる。

「こうなってしまうとあまり時間がない。瑠璃の記憶が回復するのを待つつもりだったが……。」

そこで言葉を一旦切り、瑠璃の顔を見つめてくる。

そこにあるのはいつもの、瑠璃の全てを見透かすような、意志の強い瞳ー

「瑠璃、俺と一緒に来てほしい。……天野の家を出よう。」
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