満月の人魚
「瑠璃‼」
丈瑠の声が聞こえたかと思うと、ふと体にのしかかっていた重みが遠のいた。
見ると丈瑠が父を殴り飛ばしているところだった。
瑠璃ははだけたブラウスの前を手で押さえながら、ゆっくりと体を起こした。
恐怖でカタカタと震える体を自身の手で抱きしめる。
「瑠璃、大丈夫か?」
顔を上げると、丈瑠が軽く息を切らせながら、瑠璃の顔を心配そうにのぞき込んでいる。
「…………っ」
瑠璃は声にならない呻き声と共に、丈瑠に力いっぱい抱き着いた。
(怖かった…来てくれた…でも一体どうやって?)
この事態に頭がついていかず、様々な思いが瑠璃の中でぐるぐる駆け巡る。
「ううっ」
その時、床に倒れていた父が、ゆっくりと身じろぎしながら起き上がるのが視界に入ってきた。
殴られた頬を手でおさえながら、丈瑠を激しく睨んでいる。
いつも整えられている髪は乱れ、瑠璃ともみ合ったせいで衣服も皺くちゃなその姿が、普段の父からは想像出来ず、まるで見ず知らずの他人と相対しているかのように瑠璃に思わせた。
丈瑠の声が聞こえたかと思うと、ふと体にのしかかっていた重みが遠のいた。
見ると丈瑠が父を殴り飛ばしているところだった。
瑠璃ははだけたブラウスの前を手で押さえながら、ゆっくりと体を起こした。
恐怖でカタカタと震える体を自身の手で抱きしめる。
「瑠璃、大丈夫か?」
顔を上げると、丈瑠が軽く息を切らせながら、瑠璃の顔を心配そうにのぞき込んでいる。
「…………っ」
瑠璃は声にならない呻き声と共に、丈瑠に力いっぱい抱き着いた。
(怖かった…来てくれた…でも一体どうやって?)
この事態に頭がついていかず、様々な思いが瑠璃の中でぐるぐる駆け巡る。
「ううっ」
その時、床に倒れていた父が、ゆっくりと身じろぎしながら起き上がるのが視界に入ってきた。
殴られた頬を手でおさえながら、丈瑠を激しく睨んでいる。
いつも整えられている髪は乱れ、瑠璃ともみ合ったせいで衣服も皺くちゃなその姿が、普段の父からは想像出来ず、まるで見ず知らずの他人と相対しているかのように瑠璃に思わせた。