満月の人魚
先程瑠璃に見せた穏やかな表情とは打って変わって、今は見開いた目に口を真一文字に結び、どこか不気味さを感じさせる。
「兄さん!なぜなの‼なぜ私達を‼」
瑠璃は恐怖とこの状況が信じられない思いから、叫ぶように零士に問いかけた。
「瑠璃は僕の花嫁だ。その男には渡さない。僕たちは一生一緒にいる運命なんだよ。」
零士が包丁を握り直す。
その目には狂気が宿っていた。
瑠璃は驚いていた。
零士が自分を異性として見ていた事、そしていつも穏やかな零士の中に、こんな激情が隠されていた事に。
「兄さん……ごめんなさい。私はあなたとは一緒になれないわ。」
傷を負った丈瑠を背にかばいながら、瑠璃は静かに涙を流した。
その時、丈瑠が小声で話しかけてきた。
「瑠璃、よく聞くんだ。彼に話し合いをする余裕があるようには見えない。一刻も早くここから出るんだ。俺が彼を引き付けておくから、その隙にあの扉から逃げろ。」
丈瑠が、自分達の後方にある勝手口に視線だけやって瑠璃に指示をする。
「駄目よ。あなたを置いていけないわ。」
「俺は後から必ず行く。瑠璃だけでもここから出るんだ。」
「兄さん!なぜなの‼なぜ私達を‼」
瑠璃は恐怖とこの状況が信じられない思いから、叫ぶように零士に問いかけた。
「瑠璃は僕の花嫁だ。その男には渡さない。僕たちは一生一緒にいる運命なんだよ。」
零士が包丁を握り直す。
その目には狂気が宿っていた。
瑠璃は驚いていた。
零士が自分を異性として見ていた事、そしていつも穏やかな零士の中に、こんな激情が隠されていた事に。
「兄さん……ごめんなさい。私はあなたとは一緒になれないわ。」
傷を負った丈瑠を背にかばいながら、瑠璃は静かに涙を流した。
その時、丈瑠が小声で話しかけてきた。
「瑠璃、よく聞くんだ。彼に話し合いをする余裕があるようには見えない。一刻も早くここから出るんだ。俺が彼を引き付けておくから、その隙にあの扉から逃げろ。」
丈瑠が、自分達の後方にある勝手口に視線だけやって瑠璃に指示をする。
「駄目よ。あなたを置いていけないわ。」
「俺は後から必ず行く。瑠璃だけでもここから出るんだ。」