ロリポップ
 友華と二人でビールを注文して、大好きな厚焼き玉子と枝豆に冷奴を先に注文する。
 鍋をつつきながら飲もうという事だったけれど、ほかの二人が来てからにした。
 鍋は人数が多くないとおいしく感じられないし。


「もう誰も好きにならない、とか言い出さないでよ」


 友華がビールをグイグイと半分ほど飲んで、私に視線をよこす。
 

「さすがにそれはないよ・・・でも、今はいいかなあっては思うけど」



 正直、あんなにショックだったのにどこかスッキリとしたものがあった。
 店員さんもびっくりする位、ワンワン泣いたからかもしれない・・・。
 今、思えばかなり恥ずかしいけれど。
 でも、一番は見たくないけれど、その事実を目にすることで理解したからかもしれない。
 ただ、『別れた』だけで、理由を何も言ってくれなかった文哉。
 いや、女として見れないって言われたのも理由の一つか。
 でも、他に理由があるんでしょ?と聞きたい気持ちは言えないままだったから。
 何で聞かなかったのかと自分でも思ったけれど、それはやっぱり勇気がなかったんだと思う。
 どんだけヘタレなのよって自分でも嫌になる。
 その理由を見てしまった事はショックだった。
 誰だってショックだよね・・・結局は自分じゃない女の子が好きになったって事だから。
 でも、その心変わりを感じていたのに気づかない振りをしていた事にも気が付いてしまった。
 だって、文哉と女の子の姿を見たとき、一番最初に思ったのは「やっぱり・・・」だった。
 気が付かないうちに分かっていた事に、自分でもショックだったけれどそれを認めないわけにはいかないもの。
 それを受け入れて、文哉の別れをやっと受け入れれた。
 そんな感じ・・・かな。
 でも、さすがにすぐに次の恋愛ってとこまでは考えられない。
 心にも休息が必要だよ・・・友華。



「そのうち音羽の見た目、峰 不二子だけじゃなくて全部を愛してくれる男が現れるわよ」



「だから、峰 不二子は余計だってば」


「何言ってんのよ。そんだけいい体しといて。変われるなら変わって欲しいわよ」


「私も変わって欲しいわよ」


 そんなしようもない会話を繰り返していると


「遅くなって悪いな」



 そう言って個室の襖が開いた。
 開けたのは今日のメンバーの一人、林田 健成(はやしだ けんせい)だった。
 営業の林田君は友華の大学の同級生。友華と一緒にいるうちに、気が付いたら一緒にお酒を飲む程に仲良くなっていた。
 さっぱりしていて、男友達としてはすごくいいけれど、彼氏にするのはちょっと・・・って感じ。
 理由は一つ。
 彼女が沢山いるから・・・。
 ハーフっぽい容姿で長身の彼はとにかくモテる。女の子に困った事は今までの人生で一度たりともなければ、振られた事もないらしい・・・くっそうー!
 来るもの拒まず去るもの追わず?みたいな恋愛観らしい。
 理解できないから・・・。
 恋愛観がいい加減すぎて彼氏とかって発想にならない人。



< 7 / 69 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop