紗和己さんといっしょ
……悪い気はしない。全然。
そこまで言われて悪い気になる筈がない。でも。
「…やっぱ見るの禁止。見ないで下さい」
「ええっ!?」
フイと顔を横に背けてしまった私に、紗和己さんが驚きの声をあげる。
「すみません、僕、なにか変なコト言いましたか?」
うん。変。紗和己さんの考えって、絶対変。
すっかり困ってしまった紗和己さんに背を向けながら、私は塗りかけの肌色を急いで均等に広げる。
「紗和己さん、私の一挙一動愛しすぎ。
たかがメイクでこんなにドキドキさせられてたら私、心臓が幾つあっても足りない」
変で素敵過ぎる思考を持つ恋人は、一緒に暮らすにはトキメキが多すぎて。
ファンデーションで隠しきれないほど赤くなってしまった頬に、今日はコントロールベースを塗らなかった事を後悔してしまう。
「すみません。もう大人しくしてますから」
「ダメったらダメー!紗和己さん、視線熱いから!」
「それはしょうがないじゃないですか」
必死に顔を覗き込もうとする紗和己さんと、熱視線から逃れようとする私の追いかけっこ。
部屋の温度、本日も上昇中なり。