砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
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女を知って十年あまり、戦につぐ戦でどれほどの窮地にあったとしても、女無しで過ごすのは三ヶ月が限界だった。

その数字は、決して女好きに入るものではないと思う。

性欲は戦闘で発散することが多かったせいかもしれないが、もともと、彼はそれほどまで女を求める性質ではなかった。


だが、リーンを妻に得てからのサクルは天井知らずだ。

それでも精一杯リーンの身体には気を遣ってきた。

そしてこの二年間、子供を欲しがるリーンを宥めつつ、先延ばしにしてきたのはサクル自身だ。それもこれも、リーンとふたりきりの蜜月を少しでも長く過ごしたかったという理由だった。


とはいえ、丸一年を過ぎたころから、事情を知らない連中がリーンに重圧をかけるようになり……。

そのことを耳にしたサクルは子作りに本腰を入れ、今年早々にもリーンの懐妊が発覚した。


問題はそのあとだった。

リーンの腹部は通常より早く大きくなっていき……医師の診立てで双子と判明したのだ。ひとりでも大変だと言われるお産がふたりとなると、当然、母体の危険は増す。

安静を言い渡された春先以降、サクルはリーンに触れることもできずにいた。


『そのためのハーレムでございます。陛下のお気に召すような、正妃様に面差しの似た娘を増やしておきました。お子様のご誕生まで、夜伽はそういった娘たちで賄っていただけますよう、お願い申し上げます』


医師の助言と言われ、後宮担当の大臣に側室を勧められては異論など唱えられない。


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