砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
当のリーンは、
『お医師の先生に止められてしまいました。申し訳ございません。わたしは……サクルさまのお心に従います。でもどうか……他に大事な方ができても、わたしのことは忘れないでください。わたし……わたしは……』
懸命に涙を堪えて言う。
大臣たちから、懐妊中は正妃自らが王に側室を勧めるもの、と説得されたに違いない。
いつもなら、リーンを抱くことで他の女など抱きたくない、と証明するのだがそれもできず。サクルは別の手段を余儀なくなされた。
『砂漠の精霊の声を聞いた。無事に子供たちが誕生するためには、父である私が清い生活を送らねばならぬ、と』
さしもの大臣たちも、精霊のご託宣を蔑ろにはできない。
それと同時に、神殿の巫女からも“砂漠の精霊の声”が発表されたのである。
『正妃に宿るのは、クアルンを正しく導く次代国王と、素晴らしき力を持った巫女である』
ご託宣がより明確なものとなり、大臣たちはリーンに対する態度を一変させた。
バスィールの王女を母に持つ次の国王――そういった不満が一掃され、誰もがリーンを正妃として崇め始める。
それはサクルにとって願ってもないことだが、結果的に自ら宣言した禁欲を厳守する羽目になってしまい……。
『お医師の先生に止められてしまいました。申し訳ございません。わたしは……サクルさまのお心に従います。でもどうか……他に大事な方ができても、わたしのことは忘れないでください。わたし……わたしは……』
懸命に涙を堪えて言う。
大臣たちから、懐妊中は正妃自らが王に側室を勧めるもの、と説得されたに違いない。
いつもなら、リーンを抱くことで他の女など抱きたくない、と証明するのだがそれもできず。サクルは別の手段を余儀なくなされた。
『砂漠の精霊の声を聞いた。無事に子供たちが誕生するためには、父である私が清い生活を送らねばならぬ、と』
さしもの大臣たちも、精霊のご託宣を蔑ろにはできない。
それと同時に、神殿の巫女からも“砂漠の精霊の声”が発表されたのである。
『正妃に宿るのは、クアルンを正しく導く次代国王と、素晴らしき力を持った巫女である』
ご託宣がより明確なものとなり、大臣たちはリーンに対する態度を一変させた。
バスィールの王女を母に持つ次の国王――そういった不満が一掃され、誰もがリーンを正妃として崇め始める。
それはサクルにとって願ってもないことだが、結果的に自ら宣言した禁欲を厳守する羽目になってしまい……。