砂漠の舟―狂王の花嫁―(番外編)
子供さえ産まれたらすべてが解決する。


大変なことではあるが、一度に王子と王女を得られるのだ。

それもこの国にとって過不足ない国王と、巫女であるなら、子供はふたりいれば充分。あとは、国の安定に配慮しつつ、リーンと幸福な新婚生活の続きをしよう。

そんな考えが、出産後、もろくも崩れ去った。

それも最愛の妻、リーンによって。


『すべてを乳母に任せたくはありません。もちろんひとりでは無理ですが、色々手伝っていただいて、ふたりとも自分の手で育てたいのです』


そう言って出産からひと月が過ぎ、サクルはリーンとふたりきりの時間すら過ごせていなかった。

もちろん、産後間もないリーンを押し倒し、肉欲を満たそうなどとは考えていない。

ただ、リーンに結婚当初のような甘いまなざしで見て欲しいだけだ。ふたりで湯に浸かり、寛ぐだけでもいい。


だが、リーンはほんのわずかでも子供から離れていると、心配でならないようだ。


その態度はサクルを苛立たせた。

そして、ついにはリーンを突き放し、


『子供たちは無事に誕生した。禁欲も終わりだ。今宵は……新しい妃を娶るとしよう。リーン、おまえが選んで王の寝所に連れて来るように』


心にもない言葉を口にしていたのだった。


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