シークレット・ガーデン
渚の言葉に、真彩は(しまった…)と思った。
すかさず司が「ごめん、真彩」と小さな声で謝罪した。
いいの、というように真彩は首を降る。
ソファに座ったまま、少し腰の位置を浅くずらして、渚の細い身体の両脇にそっと手を添えた。
渚の目を見て、ゆっくりと語りかける。
「ね。渚ちゃん。頑張れば、素敵な曲が弾けるようになるんだよ。
それはね、一生の宝物になるの。
私ね、今住んでいるおうちには、ピアノがないけど、結婚する前に住んでたおうちには、ピアノがあるから、たまに帰った時、大好きなお気に入りの曲を弾くの。
そうするとその曲がすごく幸せな気分にしてくれるんだよ。
すごく疲れていても、嫌なことがあっても、ピアノを弾いているうちに、
『くよくよしててもしょうがない、また頑張ろう』って思えるの」
渚の頬の涙を指先で拭ってやりながら、真彩は諭すように言う。
「……本当?理亜ちゃんのママが好きな曲ってどんな曲なの?」
渚はようやく泣き止み、真彩を見上げる。
「おいで。聴かせてあげる。
司、夜遅いけど、音小さくするからいいでしょ?」