シークレット・ガーデン
このまま別れたくない気持ち
出入り口の近くに、白のストライプのカッターシャツを着た若い男が佇んでいるのが視界に入った。
男は、天井に頭がつきそうなくらい身長が高い。
先ほどの『砂川フルーツ・ガーデン』の経営者を見下ろすようにして会話を交わしていた。
真彩は、目を見開き、手を口に当てた。
ーーもしかしたら……
あんなに背の高く体格の良い男はめったにいない。
真彩の胸はどくどくと早鐘を打つ。
男が横顔を見せた。
遠目でも分かる優しい目元。
いつの間にか、真彩は走り出していた。
「司!司じゃない?」
男は真彩の声に反応した。
「真彩…?」
振り向いた男は、はやり司だった。
真彩は悲鳴をあげそうになるのを慌てて口をふさいだ。
「えええっ!マジ?真彩?」
司は満面の笑みで、右手をピストルの形にして真彩に向けた。
「すごい偶然よね!こんなところで会うなんて。
それに……なあに?」
真彩は、クスクス笑って、司の口の辺りを指差した。
「口髭、生やしてるなんて、びっくり。ちょっと不良っぽいけど、すっごく似合ってる!」
「…いや。
前からやりたかったんだけど、サラリーマンじゃなかなか出来なくてさ……」
照れ臭そうに頭を掻く司の言葉は、お国訛りが強くなっていた。