シークレット・ガーデン


真彩のことをちゃんと覚えていてくれて、部屋に入るなり、

『理亜ちゃんママだあ!』と言って抱き付いてきた。


ディズニーランドで買った自分用のミニーマウスのメモ帳を『理亜ちゃんに!』と言ってプレゼントしてくれた。


『理亜は字なんかまだ書けねえし』


父親に突っ込まれると渚は、

『大きくなったら、使えばいいでしょ』

とさらりと言い返した。



その様子が、可愛らしく生意気で、真彩は笑い声を立ててしまった。



小さな子供は、数ヶ月会わないだけでもその成長ぶりに驚かされる。



……ましてや、渚が2才の時、別れた司の前妻は、もうすぐ5才になる我が娘の姿に心の中で泣いたかもしれない。


母と名乗ることが許されない彼女の気持ちを考えると、真彩の目頭は熱くなった。

でも、仕方ない。


彼女自身が選んだことだ。

可哀想だとは思うけれど、あまり同情する気にはなれなかった。


アメリカで日本人女優として活動しているという彼女は、渚のことを時々思い出すだけで充分なのだろうから。





「バイバーイ!理亜ちゃんママあ、お休み、気を付けてね〜」


しつこく手を振る渚の後ろで、ジーパンのポケットに両手を突っ込んだスタイルで佇む司の姿。





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