シークレット・ガーデン


真彩も司と渚に小さく手を振り返した。


「はあい。渚ちゃんも早く寝るのよ。
ピアノ、またいつか聴かせてね!
目標は仔犬のワルツ!
学校のお勉強も頑張ってね。
お休みなさあい」



叫ぶように言ったあと、真彩は思う。



……ありがとう、司。

私、最高の恋愛をしてたって思ってる。


優しくて、甘くて純粋で。
最高にいい男。

こんな男はそうはいない。司に愛される女は幸せだよ……


きっと、司は近い将来、誰かと恋に落ち、新しい家庭を築くだろう。

人懐こい渚は、大好きなパパが選んだ女(ひと)をすぐに本当のママみたいに慕うようになる。


愛情があれば、血が繋がっている、いないはどうでもいい…

今は、パパからの溢れんばかりの愛情を目一杯に浴びて、大きくなっていけばいいよ……

ね?渚。




すううっと、真彩が春の夜風を思い切り吸い込むと、駅のアナウンスが

[もうすぐ列車が到着します、白線の後ろまでお下がり下さい]

と男の声でいった。




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