シークレット・ガーデン
他にも母は、朝早くから来て、唐揚げやエビフライなどの揚げ物料理も作ってくれた。
光俊の母は、手のひらに乗るくらいの小さな黒い石を用意してきた。
家の近所にある神社から、頂いてきた石だと言う。
「歯固め石って言うんだよ。
歯が丈夫になるようにって。
理亜ちゃんに食べさせる真似するの」
へえ〜と真彩と光俊は同時に声を出して関心する。
そんなものが世の中にあるなんて、全く知らなかった。
真彩達のマンションで開いた祝いの宴には、藤沢のはずれに住む真彩の両親、8歳下の弟。
鹿児島の光俊の母が顔を連ねた。
光俊の父は、仕事で中国へ長期出張をしているから不参加だった。
「理亜、すげえ、パンパンじゃん。
腕とか食ったら旨そう」
お調子者の真彩の弟、貴文が変な事を言う。
「くだらない事言ってないで、
早くちゃんと就職しなって。いつまでも学生気分じゃだめよ」
真彩は、大皿に盛られた鳥の唐揚げを自分の小皿に取りながら、貴文に言ってやる。
真彩の言葉に、貴文は、てへへ、と笑って頭を下げ、ビールを一口啜る。
24歳の貴文は、最高学府を出ていながら、ずっと居酒屋でアルバイトする生活を送っている。
特に夢があって…とかいう訳じゃない。