シークレット・ガーデン
司の電話の内容は、やはり渚のことだった。
1時から打ち合わせなんだ、と前置きしてから司は話し始めた。
『渚がピアノ、習いたいって言うんだよねえ。
同じ組の仲良しの子が習ってるんだ。
でも、ピアノって家でも練習しなくちゃらならないだろ?
デジタルピアノ買ってやってもいいんだけど。なんか、怪しいんだよな。
渚、結構飽きっぽいし。
バレエだって4ヶ月で止めたし。
ピアノ買って飽きたら、最悪だよ。
どう思う?』
電話で司の声を久しぶりに聴き、嬉しくなる反面、なぜこんな話を自分にしてくるのだろうと真彩は不思議に思う。
保育園のママ達。
会社にも子供を持つ女性はいるだろう。
昔、付き合っていた女に子供の相談をする司の真意は何なのだろう…
そんな風に思いながらも、真彩は明るい声を出す。
「自分で、やりたいって言い出したことなら、続けさせなきゃダメよ。
簡単に止めさせちゃダメ!
私なんて、ピアノの練習が辛くて、何度止めたいって思ったか。
その度にお母さんにすごい怒鳴られて泣きながら練習してたんだから。
でも、そのおかげで続けられたし、特技の欄にピアノって書けるから、頑張って良かったって思う」