イケメンルーキーに恋をした
カチカチカチカチ……。
コンクリートの壁に掛けてある丸い時計の秒針の音が、あたしの心臓にグサグサ刺さって動く度に痛い。
ドアの前で一歩も動けないあたしは、眉間にシワを寄せてウエスト付近で手を弄んだ。
さおりの方に目を目を向けることが出来ない……。
部活の始まってるこの時間の部室周辺は、本当に静かだ。
あたし達の息の音と、秒針の音しかしない。
コンクリートの壁が、そのふたつの音を悲しく響かせる。
「……さおり」
何度目かの勇気を出した。
この前、トイレで声をかけた時は失敗してしまったけれど、今回はさおりに逃げ場はない。
出口は、あたしの後ろのドアだけだから。
さおりが、グッと俯いた。
ベンチに座る膝の上で、固く拳を握っている。
「あたしが……さおりに何を言っても聞いてもらえないかもしれないけど……」
「…………」
話す度に、怖くて怖くて心臓が震えてくる。
声が震えているのか、体が震えているのか……。
視界も全て震えている……。