イケメンルーキーに恋をした


カチカチカチカチ……。


コンクリートの壁に掛けてある丸い時計の秒針の音が、あたしの心臓にグサグサ刺さって動く度に痛い。


ドアの前で一歩も動けないあたしは、眉間にシワを寄せてウエスト付近で手を弄んだ。


さおりの方に目を目を向けることが出来ない……。


部活の始まってるこの時間の部室周辺は、本当に静かだ。


あたし達の息の音と、秒針の音しかしない。


コンクリートの壁が、そのふたつの音を悲しく響かせる。


「……さおり」


何度目かの勇気を出した。


この前、トイレで声をかけた時は失敗してしまったけれど、今回はさおりに逃げ場はない。
出口は、あたしの後ろのドアだけだから。


さおりが、グッと俯いた。


ベンチに座る膝の上で、固く拳を握っている。


「あたしが……さおりに何を言っても聞いてもらえないかもしれないけど……」


「…………」


話す度に、怖くて怖くて心臓が震えてくる。


声が震えているのか、体が震えているのか……。


視界も全て震えている……。




< 280 / 323 >

この作品をシェア

pagetop