イケメンルーキーに恋をした
「あたし、さおりを騙そうとして隠してたわけじゃないから。さおりのことを思っての行動だったの。それが……下手くそでごめん」
拭ったつもりの涙が、粒を大きくしてボロボロとこぼれ落ちる。
どんどん呼吸も荒くなっていって、涙を堪えようとする度に、鼻の奥がツンと痛くなった。
「ごめんね、さおり……。話を聞いてくれて……ありがとう」
あたしはやっとの思いでさおりに言い、クルリと踵を返した。
ドアの取っ手に手を掛け、ガチャと乾いた音を出してドアを開ける。
「待って!!」
さおりの大声に、ピタリと動きが止まる。
ドアの取っ手を握る手に、力が入った。
「悪いのは美海だけじゃないよ!!」
必死なさおりの声。
あたしは涙を流しながら、ゆっくりさおりを振り返った。
さおりが、目を真っ赤に腫らし、次から次からに涙を頬に落としている。
「謝らないといけないのは、あたしもだよ……」
勢いのよかったさおりの語尾が、徐々に消えていく。