【BL】夕立の中、佇む君は
それでいいはずだったんだ。
なのに、ある日、キャンパス内を歩いていたときだ。
俺は偶然に聞いてしまった。
彼女の
「別に本気じゃないよぉ。単なる暇つぶし。遊ぶにはちょうどいいし。」
という言葉を。
理性で飛び出していくことはしなかった。
やり場のない怒りを両手に込めた。
強く、強く握り締めた。
そして走った。
君の元へ。
君を見つけた頃、息は上がりきっていて、そんな俺に落ち着けと君は言った。
「どうしたんだよ?とりあえず落ち着け。」
呼吸を整えて、俺は口を開く。
「彼女と別れろ。」
理由は言わなかった。
言えなかった。
「何だよ、それ。何の冗談だ?」
君は尚も苦笑していう。
「冗談じゃない。」
「…………」
「冗談なんかじゃない。」
「お前らしくないな。」
君は笑って受け流した。
俺はまた両手を握り締めただけだった。
どうして俺にこんなこと言われて笑ってられるんだ?とか。
どうして信じてくれないんだ!とか。
様々な感情が行き交って、俺はそれ以上言えなかった。