先天性マイノリティ
待ち合わせのファミレスに入り一望すると、窓際に奇抜な容姿の女を見つける。
サテン地のビビッドピンクの開襟シャツに、黒無地のネクタイ。
小振りのハットを被ったさまは巷のロック・ミュージシャンのようだ。
大抵彼女は角張った場所を選んで座る。
隅が好きで落ち着くのだと本人も言っていた。
近づき、正面の席に腰を下ろす。
「やつれたね、ゼロジ」
視線がかち合う一瞬、こいつも哀しみに呉れていると悟る。
「相変わらず男前だな」
「第一声がそれ?拍子抜けした」
彼女の眼が真っ赤なのは単なる寝不足のせいではないだろう。
(そう言う自分の眼も、きっとB級ホラー宛らに血走っているに違いなかったけれど。)
メイは、外見も内面も強烈な女だ。
コウと俺が恋愛関係にあることを知っていたこの世で唯一の人物。
高校のときに知り合い意気投合してから、コウ、メイ、俺の三人は「なんとなく」一緒にいた。
これからも三人ワンセットで生きていくものだと漠然と思っていた。
でも、未来の不確かさは想像以上に残酷だった。
普段よりも歯切れの悪い会話を交わし、店員を呼び止めて注文をする。
カルボナーラパスタに、シーザーサラダ、ミートドリア。
ポテトフライにたこ焼き、シーフードピザ…。
メイは次々と店員へ告げる。
とても二人では食べきれない量の、胃もたれを起こしそうなお子様メニュー。
結果、テーブルに並んだのはコウの好きなものばかりだった。
「やけ食いしてやる。なんなの、コウのやつ。馬鹿」
そう呟く眼元は、やっぱり赤い。パスタを小皿に取り分けフォークに絡めながら、互いに胸の内の縮れた糸の塊を解いていく。
空腹には重過ぎるチーズの風味。
不思議と、なにを口にしてもあまり味を感じない。
…美味しくないね、とメイが呟く。
厄介なことに、コウの死が味覚にまで反映されている。
時間が過ぎるのが遅く感じるのも、俺たち二人が普段よりも寡黙だから。
話題は静かに、緩やかな坂を下るように紡がれる。