先天性マイノリティ
「葬儀、いつもの私らしくいようと思って、喪服じゃなくて私服にしたんだ。礼儀知らずなのは承知でさ」
「あの日のお前はロックスター並みの貫禄だったよ。祭壇の花ばら蒔くって前代未聞だろ」
「あはは、だってねえ。コウのやつ、本当に死んでるなんて、思わなくて」
彼女の声が次第に小さくなり、運ばれて来たドリンクも寡黙になる。
賑やかな店内に馨る静寂。
BGMが壮大なクラシックに切り替わる。
「…もういないんだよね。どうするのゼロジ、あんた生きていける?私は自信ない、コウに裏切られた気がするし正直メチャクチャ腹がたってる」
「…幸せな人間は自殺なんかしない。コウは不幸せだったのか。俺に相談もしてくれずに一人で逝った」
「違うよゼロジ、コウが変だったのは知ってるでしょ。コウのことだから一番幸せなときにって考えたんじゃないかな。死ぬことにも生きることにもあんまり執着しなかったけど、ゼロジにだけは貪欲だったからさ。失いたくなかったのかも。でも自殺はよくないよね、格好悪い。最低だよ」
涙声になりながらコップに口をつけてメロンソーダを飲み干すメイ。
その指先は微かに震えている。
俺の記憶も連動するように引きつけを起こす。