先天性マイノリティ
三人でよく歩いたこの道も今日はぼやけて視える。
華やかな露店も賑やかな音楽もちっとも魅力的に映らない。
改札が近づくにつれて人が増える。
そういえば今日は日曜だ。
この人混みの中でもメイは目立つ。
昔から、人目を惹く容姿のメイとコウは二卵性の双子のようだと言われていた。
俺もそう思う。
コウの死に対し、メイ自身も半身を失ったような感覚だと嘆く。
俺の喪失感はといえば形容する言葉が見当たらないほどに深く、血の気が失せてこの場で倒れそうなほどだ。
…情けない。
俺は、明日から生きていけるのだろうか?
そんなことをぐだぐだと言いながら惨めに生きるのだろう。
きっと、そうなのだろう。
意味も無く未来への希望も無く、ただ生き延びるのだろう。
両親のことについて聞かされ絶望した"あの日"のように、全てが消えた毎日を送るのだろう。
隣を歩くメイが、俺のパーカーの裾を掴む。
次第に指先に力が籠められるのがわかった。
「本気であんたたちに幸せになって欲しかった。性別とか関係なく、私は、信じてたよ」
痛烈に胸の奥へと届いた言葉。
心臓が携帯のバイブレータのようにぶるぶると振動を刻み、直に伝わる。
やっとのことで、有難うな、と絞り出した小さな小さな俺の声は、ホームに入線して来た電車の音に跡形もなく掻き消される。
「じゃあねゼロジ、死ぬんじゃねえぞ」
扉が開くとメイは乗車して向き直り、ホームに立ち尽くす俺に笑顔を造る。
その凛々しさといったら、ちびっこの憧れる戦隊ヒーローの類の輝きだ。
「お前、やっぱり格好いいよ」
「なにそれ」
また連絡するから、と彼女の口から紡がれた瞬間に扉が閉まる。
重要点をなにひとつ言えなかった自分に苦笑。
…失笑、後、嘲笑。
廻れ右をして帰路につく。