先天性マイノリティ
「もし俺が死んだら、って考えたことある?」
重低音が鳴り響く部屋の中、コウが問う。
彼が好む世界観は音楽、言動を含め俺には難解だ。
内に秘められた灼熱の激しさと、誰にも踏み込ませない絶対領域を象るデスウ゛ォイス。
ヘヴィメタルやハードロックしか聴かないというスタンスは幼少期から染み着いたものらしい。
感情を宥める類のポップスは好きではないと言いきるコウは、バラードよりも脳を揺さぶるロックを聴くほうが癒されるのだという。
やはり変わっていると思った。
(でもそんなことを言いながらアイドルのDVDやメイド喫茶も好きなのだから、よくわからない。)
そして、この質問。生死にまつわる問いが彼は好きらしい。
付き合ってからは特に、結構な頻度で訊かれている気がする。
俺は癖づいた答えを言う。
「不吉なこと言うなよ、お前が死ぬ夢なら何度も見た。お前が自殺して、俺がすげー後悔する、夢」
「泣いた?」
「辛過ぎると泣けない」
「そう。リアリティがあるな」
コウは生粋の変人だ。
天才肌というのはこういう人物なのだろうと思う。
一見普通に見えても持っているものが、違う。
俺は安売りの地球儀をひとつ抱えるだけで精一杯なのに、コウは火星でも水星でも好きなだけ持つことが出来る。
レプリカではない、本物の輝きを放つ惑星を。
「俺は、いつもゼロジが死んだらって考えてるよ。明日刺されて死んだらとか、いかれた野郎に強姦されて死んだら、なんてのも」
「悪趣味にも程があるだろ…それに俺、女じゃないしな。強姦ってなんだよ」
「大丈夫だよ、俺の脳内での想像止まりだから」