先天性マイノリティ
乗り込んで来た複数人の集団に手脚を拘束されて、霊柩車のようなものにのせられる。
このまま冥界にでも連れて行かれるのか。
…もう一度だけでいいから、コウの顔が見たい。
溢れる涙で世界が滲んでいく。
アタマの中では確かにコウの声がするのに、姿が見えない。
「コウ、どこにいるんだ!」
叫んでも躰は動かず、ただ微かに笑う声が聴こえるだけ。
代わりにもうひとりの自分が目の前に現れた。
俺と同じ姿、同じ声で告げる。
戦慄の言葉を。
──『コウは死んだだろ。骨になったのを、お前も見たはずだ。葬儀に出たじゃないか』
やめろやめろ、やめてくれ!
死んでない、コウは死んでなんかいないんだ!
声にならない呻きが喉奥を抜けて空宙を擘(つんざ)く。
絶叫。
…ああ、このまま透明な魂になって消えてしまえたらいいのに、と思う。