先天性マイノリティ
真っ暗な街で俺は佇んでいる。
空は漆黒に染まり星はなく、太陽も月もない。
マリオネットが躍り、無数の風船が浮く遊園地のような世界。
沢山の露店が並び、子供から大人までが働いている。
イルミネーションが瞬く劇場の前で、目深帽を被った老人が座り込んでいる。
俺はなんとなく訊ねてみる。
「今は夜ですか?」
「昼と夜があるのは生きているうちだけだよ。便利なのか不便なのか、まるでわかりゃあしない」
…やはりここは夢の中だ。
昔から俺は夢の中での判別に長けていて、恐ろしい幽霊が現れるような非現実的な映像を目の当たりにした際には、自分の頭を叩いて強制的な起床を促すことが出来る。
目醒めの成功率は六十から七十くらいのパーセンテージ。
年々鈍くなっていると思っていたが、久々に大成功出来そうな夢だ。
然し害のない夢だから、強制的に自分を起こす必要性も感じない。
深呼吸をする。
少し冷えた空気を感じる。
掌を見る。
少しの汗で湿っている。
…とてもリアリティのある夢だ。
ちかちかと輝く街並みに、山積みのおもちゃを箱詰めしたような空間。
別の惑星に不時着をした星の王子気取りで探索をしてみようという気分になる。
そのまま暫く歩き、照明の眩しい建物へと足を踏み入れてみる。
エスカレータで二階へ昇ると、ゲームコーナーがある。
店内に客はひとりもいない。
従業員は検品作業や品出しに追われているようだが、誰もいらっしゃいませを言わない。
俺に無関心なようだ。
それが存外に心地が好い。
ここには都会特有の喧騒もなく、ぎらぎらした獣のきぐるみを着たセールスマンもいない。
ただ淡々と、刻々と時間を消費している世界。
否、時間という観念も存在しないのかもしれない。
店頭に並んでいる商品には、どれも値段の表示がない。
ここには、金銭の観念もないらしい。
学生の頃によく読んでいた宮沢賢治の童話の世界に迷い混んでしまったような気分になる。