恋がはじまる音
「昨日は突然ごめん。驚いたよね。
……俺、隣のクラスの白築啓(しらつき けい)。
伊崎(いさき)さんのことはずっと知ってて……、それで、ずっと好きだったんだ。
諦め悪いって思われるかもしれないけど、1回だけでいいから、一緒に帰ってくれないかな」
翌日、昼休みに遠慮がちに私のクラスに訪れた彼は、私を廊下に連れ出してそう言った。
ダメ、かな。
と、捨てられた子犬のような目で見られたら。
「……う、うん……。じゃあ、いっかいだけ……」
自分でも情けなくなるくらい気弱な私に、NOなんて言えなかった。