冷たい王子様。
「おはよー!」
紗綾が元気よく教室に入って行く。私もその後に続いて入っていった。
どちらかというとクラスであまり目立たない方の私は、特に挨拶をクラスメートに投げかけるわけでもなく。
入り口に近かったたまに話す女子に小さく「おはよう」と言った。

「あ!もう席順書いてるじゃん!」
黒板には確かに新しい席順がチョークで書かれていた。
離れちゃったねー、と言う紗綾の席は…廊下側の一番前か。
えっと私は…。
自分の名前を指でたどるように探して行くと、「あ。」見つけた。
窓側の一番後ろ。
うわサイアクー!陽めっちゃ当たるじゃん。
はぁ…なんか今日って朝からツイてない?
「やったー!リョータと隣じゃんっ!!」
隣で飛び跳ねて喜ぶ紗綾を尻目に、私の隣を確認する。
「か、した…樫田?」

あれ、どっかで聞いた事あるような名前だな…。
まぁ一応クラスは同じなんだし、聞いた事あるのは当然か。

…まだ来てないみたい。もうすぐ予鈴なるのに。
もしかして今日休みとか?

とりあえず席着くか。

ガラガラッ。
「おーいお前ら席付けー。」
教室に入ってきた先生が後ろではしゃいでいた男子数人に注意する。
うーい、とか生返事をしてそれぞれが自分の新しい席につくが、私の隣の人ではなかった。
「えーっと、じゃあまず…。」

先生がそこまで言ったところで、教室の後ろのドアが開いて、誰か入ってきた。
「…遅れてすいません。」
静かに、落ち着いた声色でそう一言謝罪の言葉を口にした。

「樫田~新学期そうそうどうしたんだ?」
「すいません。メガネが壊れたんで、スペアを取りに行ってました。」
などという会話が繰り広げられる。

…かした、かした、かした。あぁ、あの人が私の隣か。
なんかそこかで見たことあるような…。

思い出そうと考えているうちに、樫田が私の隣へ座る。
考えるのを一旦止め、第一印象は肝心!と小さくよろしくと言った。
「あぁ、よろし……え?」
「ぅん?」
疑問符つきで返されたから思わず樫田のほうを見た。


―!朝の…!
「…よろしく。」
通りで聞いた事あるわけだ。しかもメガネのスペア取りに行って遅刻とか完璧私のせいじゃん!

第一印象が肝心なんて言っちゃって、最悪なイメージ植えつけちゃってんじゃん…。

やっぱり今日、ツイてない。
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