*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
春を感じさせる温い空気の中、柱に寄りかかった汀は、黙ってぼんやりと月を眺める。






時々、杯をとって清酒を少しずつ口に含み、菓子の干棗(ほしなつめ)や揚梅子(やまもも)をかじった。





しかし、いつになく口数は少なかった。





(………姫さま、やはりお元気がないーーー)




露草はそう思いながら、静かに傍らに控えていた。





「…………ふぅ」





汀が微かに溜め息を吐き出す。




露草がちらりと視線を向けると。





「………犬でも飼おうかしら」





汀は真剣な表情でそう呟いた。







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