*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「…………は、犬、でございますか」





露草は律儀に応える。





「………そうよ、犬。


どこかに、赤毛の犬がいないものかしらねぇ………」





冗談を言っているのか、と露草は思ったが、どうやら汀は本気らしい。





(姫さま、そんなにも、あの若者のことをーーー?)





露草は急に不安になる。




右大臣の姫君とあれば、将来は由緒正しき家柄の貴公子を夫として迎えるのが当然である。




(………それなのに、よりにもよって、あのような得体の知れない者にーーー)





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