*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「…………かわいいっ!!」





叫んだ汀は、釣殿から飛び降りた。






「……………」





最近はこのような突拍子もない行動に慣れてしまい、露草は声もなく見守るだけである。





どこか諦めたような視線を背に受けていることにも気づかず、汀は子犬のもとへと駆け寄った。





子犬は尻尾を振りながら汀に鼻を寄せてくる。





「きゃっ、ふふふ!!


くすぐったいわ、やめて!」





汀は嬉しそうに笑いながら子犬を抱き上げた。





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