*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
釣殿で呆然と待っている露草のもとに、汀は子犬を抱いて戻る。





「ーーー運命だわっ!!」





きらきらとした瞳で汀が叫ぶ。






「犬でも飼おうかしら、と言った途端に現れるなんて!!


この子は私に飼われる定めなのだわ!!」





今宵は眉月、釣殿はさほど明るくない。




露草は持ってきていた紙燭(しそく)に火をつけた。



その灯で汀の胸もとを照らす。




薄い樺茶色の子犬であった。




「………あら?」




子犬を見下ろしていた汀が声を上げる。




「………前脚になにか付いているわね」






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