*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
着替えの衣装が届くと、汀は服を着はじめる。





白の小袖の上に緋色の長袴を履き、真っ白な単を羽織る。





その上に、袿を重ねて着ていく。



襲色目(かさねのいろめ)は、春らしい躑躅(つつじ)だ。



五つ衣は紅、薄紅、薄紅淡、青、そして薄青。





さらにその上に、薄紅梅の打ち衣(うちぎぬ)と濃紅梅の表着(うわぎ)を重ねる。






「………まったく、重いったら。


肩が凝るわねぇ」






着替えを終えた汀は独りごちて、ふぅ、と溜め息を吐き出した。






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