*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
(あ………っ!!)







六の君は、思わず目を覆う。




急所に矢を受けた身体は、ぐらりと傾いで、築地の内側に落ちた。






六の君は、恥じらいもなく袴の裾を高く絡げ、倒れ伏した人影に大股で走り寄った。







長い深緋(こきひ)の髪が、地面に流れている。




その髪に隠れ、横を向いた顔の表情は見えなかった。







「おい、当たったのか!?」







少し離れた所から、緊迫した声でのやりとりが聞こえる。







「いや、分かりません!

樹の陰になっていて、見えませんでした!!」







十数人ほどだろうか。



先ほどの舎人たちに加え、武器を持った御門守(みかどもり)らしき男たちが、声を荒げて話しながら、走って近づいてくるようだ。








「今は姿が見えません!!」






「当たって落ちたか、飛び降りて逃げたか……」






「あたりを探してみます!!」






「邸内と外に分かれて、くまなく探せ!!

絶対に逃すなよ!!


あれは、白縫山の火影童子だ!!

捕らえたら大手柄だぞ!!」






「はいっ!!」







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