*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語







十三夜の月は天心を過ぎ、夜の更けてきたことを知らせていた。




白縫党の面々は首尾よく仕事を終え、うまく追手を撒き、大荷物を抱えて山へと戻る道を急いでいた。





その間、一言も喋らずに駆け続ける灯を、群雲は眉根を寄せて眺めていた。





灯は無言のまま、ときおり不意に跳び上がって屋根に飛び乗り、追手が来ていないかを確認した。




そのまま、家々の屋根から屋根へ、時には樹木へ、ひょいひょいと飛び移って行く。





その敏捷な姿を見ていた卯花と楪葉が顔を見合わせ、少し速度を緩めて最後尾の群雲へと近づいた。





「………ねぇ、群雲」





卯花が上目遣いで、声を抑えて話しかける。




群雲は「ん?」と視線を落とす。







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