*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
卯花は瞬間、戸惑ったように空を仰ぎ、月を背に飛ぶ灯を眺めたが、意を決したように口を開いた。





「………灯ってさ、いったい何者なの?」





その言葉に、群雲が微かに眉を上げた。





「………何者って、どういう意味だ?」




「だって………灯は、鼻も耳も、それに夜目も、信じられないくらいに利くじゃない。


なんだか、普通の人間だとは思えないわ」





卯花の遠慮がちな言葉に、楪葉も同意するように「そうだよ」と頷いた。





「灯って、なんなの?」





年若い二人に詰め寄られて、群雲は困ったように苦笑した。





「………そうだなぁ。


お前たちーーーそれを知って、どうするつもりなんだ?」





「え………?」






卯花と楪葉は、揃って目を丸くした。






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