*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
遠くから届く篝火(かがりび)の光に仄紅く照らされた男の顔に、六の君がじっと見入っていると。






男が小さく呻り、微かに身じろぎをした。




六の君ははっと息を呑み、軽く目を瞠る。



衣擦れの音が、やけに大きく聴こえた。






男の睫毛が少し震え、瞼がゆっくりと上がる。





その下から、深く透き通った琥珀色の瞳が現れた。




切れ長の鋭い双眸が、静かに六の君をとらえる。






六の君も息を潜めて、薄花の瞳で男を見つめ返した。








ひっそりと、時がとまる。





六の君は、瞬きも呼吸も忘れていた。






と、その時。








「………っ……」








男が突然舌を鳴らし、眉を顰めた。



その顔には苦痛が滲んでいる。






六の君は、はっと我に返った。



暗くてよく見えないので、男の身体にさっと手を伸ばす。






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