*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
胸の辺りに手を触れてみると、胸の中央のあたりに、深々と矢が突き立っていた。
矢傷のまわりの布地は、しっとりと湿っている。
血が滲み出て、着物を濡らしているのだ。
(……あぁ、やっぱり、怪我をしてる)
六の君は反射的に、矢を抜こうと力を込めた。
しかし、身体の奥深くまで突き刺さった矢は、容易には動かなかった。
傷が痛んだのか、男はぐっと呻き、肩をびくりと震わせた。
六の君は慌てて手を引き、男の顔を窺う。
秀でた額に滲んだ脂汗が、こめかみから首筋へと伝っていった。
目はぎゅっと閉じられ、呼吸も荒く、いかにも苦し気だ。
六の君は狼狽し、とりあえず袖で男の汗を拭ってやった。
しばらくすると、痛みに耐えきれなくなったのか、男は再び気を失ったようだった。
(早く、ちゃんとした手当をしなきゃーーー)
弛緩しきった男の身体を立蔀の陰に残したまま、六の君は急いで北の対へと駆け戻った。
矢傷のまわりの布地は、しっとりと湿っている。
血が滲み出て、着物を濡らしているのだ。
(……あぁ、やっぱり、怪我をしてる)
六の君は反射的に、矢を抜こうと力を込めた。
しかし、身体の奥深くまで突き刺さった矢は、容易には動かなかった。
傷が痛んだのか、男はぐっと呻き、肩をびくりと震わせた。
六の君は慌てて手を引き、男の顔を窺う。
秀でた額に滲んだ脂汗が、こめかみから首筋へと伝っていった。
目はぎゅっと閉じられ、呼吸も荒く、いかにも苦し気だ。
六の君は狼狽し、とりあえず袖で男の汗を拭ってやった。
しばらくすると、痛みに耐えきれなくなったのか、男は再び気を失ったようだった。
(早く、ちゃんとした手当をしなきゃーーー)
弛緩しきった男の身体を立蔀の陰に残したまま、六の君は急いで北の対へと駆け戻った。