*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
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「青丹丸ーっ!!
こっちへいらっしゃーい!!」
北の対に戻って来た汀は、庭の隅で転がり回って遊んでいた青丹丸を大声で呼んだ。
ころころと駆けてくる愛らしい姿をにこやかに見つめつつ、汀は庭に降りて湯の入った桶を地面に置いた。
青丹丸は汀の傍らに駆け寄ると、尻尾を振りながらくるりとひっくり返って、腹を見せる。
汀は「あらあら」と笑ってその腹を撫でてやった。
「さぁ、青丹丸、湯浴みをしましょ」
そう言って、小さな身体を抱き上げると、そっと桶の中に入れた。
ちょうど顔だけは水面から出る水嵩になっている。