*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
「青丹丸、えらいわねぇ。


お水を嫌がらないなんて。


お利口さん、お利口さん」





小さな頭を撫でながら、土埃のついた身体に湯をかけて、汚れを落としていく。




青丹丸はつぶらな瞳で汀を見上げ、じっとされるがままになっていた。





「さ、きれいになったわ!」




桶から出された青丹丸は、ぷるぷると全身を震わせる。




「きゃっ。もう、青丹丸ったら!!」




湯の雫が顔にかかり、汀は嬉しそうに笑って青丹丸の身体をくしゃくしゃと撫でまわした。






そして、袖から取り出した布で青丹丸の毛が含んだ水気をとると、「よしっ、走って乾かしておしで!」と尻を軽く叩いた。







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