*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
その仕草を見て、六の君は「あぁ」と得心する。








「そうだったわね。あなたは庭には降りられないのよね。


ごめんね、私、自分の見方でばかり物事を考えてしまって………。



分かったわ、誰か他の人を呼べばいいわね」








「も、申し訳ございません……。


なかなか思い切れなくて……」









露草は悲し気な表情で頭を下げた。



それを見て、六の君は可笑しそうにふふっと笑う。








「いいのよ、気にしないでちょうだい。


私の方がおかしいんだから」








その後、近くにいた小舎人童(こどねりわらわ。※雑用係の少年)二人を召し連れて、東の対へと向かう。




童たちは、袴の裾をたくし上げて駆ける六の君に仰天しながら、わたわたと後を追った。






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