*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
もちろん何を言っても、相変わらず青年は答えない。




ただ、琥珀に煌めく瞳を僅かに細めて、じっと六の君の顔を見つめ返しただけだ。




それを無言の肯定と勝手に解釈して、六の君は奥から燈台を持ってきた。







油を入れた燈盞(とうさん)に点燈心を浸して、火をつける。




薄暗かった塗籠の中を、ほんわりと温かな明かりが照らし出した。





青年は、ぼうっとその灯の中心に目を向けている。








「………きれいよねぇ、灯り(あかり)って」








うっとりと燈台を見つめながら呟かれた六の君の言葉に、青年が僅かな反応を見せた。




微かな変化を敏感に感じ取った六の君は、にこりと微笑んで青年の顔を覗き込む。








「ねぇ、あなたもそう思わない?」







「…………」








青年の右の柳眉がぴくりと上がった。







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