*華月譚*月ノ章 姫君と盗賊の恋物語
(―――ふう、あぶなかったわ……)







父が去り、六の君はほっと一息ついて冷や汗を拭った。
 





そうして、几帳と屏風をよけ、妻戸を開く。




塗籠に入ると、青年がこちらに視線を送ってきた。







「……………」






「あら。起きていたの、蘇芳丸」






「……………」







無愛想な反応を気にすることもなく、六の君は相変わらずにこにこしながら青年の傍らに座り込んだ。








「ふふふ、今ねぇ………。


あなた、実はとても危なかったのよ。


あなたがここにいること、間一髪でばれずにすんだわ」







「……………」







「よかったわねぇ、助かって。


運が良かったのね。


あぁ、日頃の行いが良いのかしら?」







「……………」








青年は押し黙ったまま天井を眺めていた。




六の君は笑顔を崩さずに、さらに語りかける。







「ねぇ、蘇芳丸」






「……………」






「今日はね、外は霞が出ているのよ。


だからこの部屋、外の光が届かなくて、いつもより少し暗いような気がしない?」






「…………」






「ねぇ、火を持ってきましょうか?」







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