華の欠片
運のない女
その日の午前中は斎藤の指示で部屋で休
んでいた。
傷が昨日から痛むため少しの休養でもあ
るだけ嬉しい。
昨日睡眠を取れなかった私は巡察の時間
まで仮眠をとることにした。
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「椿、昼餉の時間だ。起きられるか?」
部屋に入って来たのは斎藤だ。斎藤はあ
れから私の事を名前で呼ぶようになった
。
親以外に名前で呼ばれた事がなかったし
、今までに友達と呼べる存在が居なかっ
たためその小さな変化が私の中で無性に
嬉しかった。
「昼餉は遠慮しとくあまりお腹空いてい
ないし……巡察の時間になったら呼んで
くれ。」
「嗚呼、分かった。体調が優れないのな
ら早めに言うんだぞ。」
「あゝ。気を使わせてしまったようだな
。すまん。」
斎藤が部屋から出て行くと、また眠気が
おそってきたが、今寝たら寝過ごしてし
まいそうだったため久しぶりに愛刀を磨
く事にした。