華の欠片

斎藤と椿





~五月~


私がここへ来てあと少しで一ヶ月が経と

うとしていた。


ここへ来た時には満開だった庭の桜の木

も葉が生い茂って、花など一つも見つか

らない。



最近ではやっと右目の痛みも取れ、右腕

の包帯は取れた。

痛みが取れた今でも右目に包帯を巻いて

いるのは、この右目の傷を晒したくない

からだ。


痛みが取れたといっても目は潰れていて

正直、外見気持ち悪い。


だから今更包帯を取る気はさらさらない。


そんなある日の出来事。


私達、浪士組が屯所を構えているのは八

木家のお屋敷である。


私達が活動拠点としている建物の隣には

八木家の方々が寝泊まりしている建物が

あり、そこには芹沢さんとやらが寝泊ま

りしているらしい。


斎藤に少し聞いただけなのでよくは分か

らないが、

芹沢さんには無礼の無いようにと言われた。

まぁ、芹沢さんとやらには会った事は無

いのだが....


私はこの日、道場で稽古をしていた。

右腕を斬られた原因は右目が見えなくな

ってバランスが取れなくなったのと、視

界が急激に狭くなった事。


右腕を斬られてからというもの、傷が塞

がった頃合いから稽古を積んで来た。



右真横が見えない為、気配をいち早く察

知しなければならない。

この目立つ白い包帯を巻いてる限りは右

目が見えて居ない事は敵にバレバレなの

で、右を狙われやすくなるのだ。
< 47 / 83 >

この作品をシェア

pagetop