サヨナラのしずく
それを聞いただけで胸がぎゅって締め付けられた。



声を聞いただけでこんなにも切なくて愛しくて、涙が流れてきた。



あたしは携帯を一度耳から離し、俊平に電話をかけた。




『雫!?』




何回目かのコールで電話に出た俊平は、いつも電話の第一声は“俺だ”なのに、今日はあたしの名前を呼んだ。




「…俊平」


『雫、おまっ…泣いてんのか?』





名前を口にしただけなのにどうして泣いているってわかったの?




『どこにいる?すぐ行くから待ってろ』


「家の前」


『あ?どこだって?』




電話の向こうで物音がしているから、俊平は出る支度をしているのかもしれない。



でもあたしはここにいる。





< 140 / 358 >

この作品をシェア

pagetop