サヨナラのしずく
俊平はあたしを柩から離し、きつく抱き締めてきた。




「雫!」


「いやっ!離して!あたしも一緒に死ぬ!」




抱き締められたままあたしはそう叫び続けた。



俊平はただあたしをきつく抱き締めて、何も言わなかった。



あたしは俊平の腕の中で意識を失った。



目覚めると、病院のベッドの上だった。



…夢?



一瞬、夢だったのかと思った。




だけど、あたしは点滴につながれていて、椅子には俊平が座っていた。



夢じゃないんだ…。



タクミさんのこと、夢じゃない…。




あたしは夢じゃなかったんだとわかり、涙が溢れてきた。




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