サヨナラのしずく
あたし自身のためにも、俊平のためにも言わなきゃいけない。



「偶然すれ違ったとしても気づかないで、あたしの噂を聞いても心配しないで……あたしのことは忘れて」



今日みたいに偶然会ってしまったり、心配されてると思うとどこかで期待してしまう。



だけど俊平には新しい毎日があるわけで、あたしの事で煩わせたくない。





「……わかった。お前がそうしろって言うならそうする。だけど、忘れるのだけはできねぇよ」


「………」


「忘れられたらどんなにいいか」




そんなこと聞きたくないよ。




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