サヨナラのしずく
何を言ったって一緒にはいられないのに。



わかっているけど、あたしの心はすごく動揺してしまうんだ。



会えば別れたくなくなるし、心配されると漬け込みたくなる。



だから、もう二度と会いたくない。




「……あたしは忘れるよ。もう会うこともないと思うから、すぐ忘れられると思う。じゃあね」




あたしは俊平を残して立ち上がった。



もうこれ以上は無理。




これ以上いれば泣いてしまうし、口にしちゃいけないことを口にしてしまいそうだよ。



すぐ忘れられると嘘をついたあたしの舌を抜いてくれたらいい。



そうしたら嘘も何も言わなくて済むのに。




この日から病院に来るたび、俊平の面影を感じた。



ほんの少し話しただけなのにこんなにもあたしを苦しめてくる存在。



だけどその存在を求めてしまう。




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