サヨナラのしずく
「何もねぇ」




何もねぇ?


名前で呼んでおいて何もないの?



何か言われるのかってドキドキしたのに。





「何もないなら呼ばないでよ」


「なんだと?」


「だって…」




ドキドキしたなんて言えなくてそこで言葉を止めた。



それなのに俊平は「だってなんだよ?」って問い詰めてくる。



あたしは「なにもない」と言って俊平に背中を向けると、後ろからぎゅっと抱き締められた。



俊平は何も話さなくなって寝たのかもしれないけど、あたしはドキドキしっぱなしで眠れなかった。




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