溺愛王子とヒミツな同居



私たちのやり取りを聞いていた谷山君は、眉根を寄せる。



「俺のせいで、暗いところがダメになったって、どういうこと?」



あの時のことを谷山君が覚えてるわけないよね。



だけど、嫌なことをされた側の人間は、いくつになっても忘れることがない。



「覚えてないなら、思い出せ。
小学生の時、まりや達家族と遊園地に遊びに行ったことがあるだろ。

面白がってお化け屋敷に入ろうって言ったお前は、怖がるまりやを連れて一緒に入った。
俺も行くって言ったけど、お前が責任持って出口まで連れて行くって言ったから、待ってたのに……。

出口から出てきたのは、お前1人だけ。
まりやのことを聞いた俺に、お前あの時なんて言ったか覚えてるか?」



そこで谷山君の様子を見て、再び話し始める。



「『途中ではぐれて、どこにいるかわからない』って言ったんだよ。
いつも、まりやにわかりやすい意地悪してたからな、お前は。

俺が迎えにいったら、こいつは大泣きしてた。
聞けば、祥吾に置いていかれたって。怖がる奴をあんな暗闇の中に1人残して、よく平気でいられたよな……。

それが原因で、まりやは暗いところがダメになったんだ」



あの時のことを思い出しながら聞いていた私は、自分で思ってるよりも心の中に深く根付いていることを改めて感じた。



大翔君が来てくれなかったから、誰かに見つけてもらえるまで、ずっと泣いてたと思うから。



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